万葉集はSNSと同じ?

皆さんは旅行に行って美しい景色を見て感動した時、どのような行動を取っていますか?

大抵の人は写真を撮って美しい景色を記録を残しておこうとするはずです。SNSをやっている人なら、その画像をインスタグラムなどにアップして、自分の感動を他の人に伝えますよね?自分の写真にたくさんのイイネをもらったら嬉しくなります。写真だけでなく言葉で伝える方法もあります。ツイッターなどが良い例です。

雨晴海岸(高岡市)

例えば右の写真のような風景を見たら皆さんはどう思いますか?

奇抜なかたちをした岩が海から突き出ていて、その向こうには夏でも雪を冠した立山連峰がそびえています。海岸に打ち寄せる白波に目を奪われる人もいるかもしれません。これは富山県高岡市にある雨晴海岸から立山連峰を見た写真です。

現代はS N Sというツールがあるので、「今日は立山連峰が綺麗に見えた」「期待通りの荒波」なんてキャプションをつけてインスタなどにアップしてみたくなりますよね。親しい人にはLINEで感動を送る手段もあります。SNSが無かった時代はどうだったでしょう?ほんの何十年か前、写真を撮る事は出来ても、現像するまでは人に見せる事はおろか、自分で楽しむ事すらできませんでした。絵葉書に感想を書いて親しい人に送る事で感動を伝えるという手段もありました。

もっと時代が遡って古代から平安時代頃の人々はどうしていたでしょう?

立山に 振りおける雪を 常夏に 見れども飽かず 神からなし
と詠んだ歌人がいます。
万葉集を編纂したとされる大友家持です。「立山に降り積もった雪を、一年中見ていても飽きることはない。神にそむかない山だからであろう」という意味です。この歌が詠まれた場所は雨晴海岸ではないようですが、大友家持はこの雨晴海岸が大層お気に入りだったらしく、

馬並(な)めて いざ打ち行かな 渋谿(しぶたに)の 清き礒廻(いそみ)に 寄する波見に
(馬を並べて、さぁ、出かけましょう。渋谿(しぶたに) の清い磯辺に寄せる波を見に)
渋谿の、崎の荒礒(ありそ)に 寄する波 いやしくしくに いにしへ思ほゆ
(渋谿(しぶたに)の崎(さき)の荒磯に寄せ来る波のように、何度も何度も昔のことが思い起こされます)
といった歌をいくつか詠んでいます。
ちなみに渋谿という地名は今の雨晴海岸のあたりの旧称です。